ダブルバブルルーフと彫刻のようなボディを持つ、プジョー渾身の2+2スポーツクーペ。アウディTTに挑んだその姿は、ブランドの“夢”そのものだった。
プジョーの量産車としては異色の、二人のための小さなスポーツクーペである。ルーフ後端に二つのこぶ状の膨らみを与えた「ダブルバブルルーフ」、そしてAピラーからCピラーへとアルミ製のパネルが弧を描いて伸びる「アルミナムアーチ」。この二つの造形が、後ろから見ても横から見てもRCZだと一目で分かる強い個性をかたちづくっている。実用一辺倒ではない、見て楽しい一台として記憶される存在だ。
成り立ちはハッチバックの308と深く結びついている。2007年のフランクフルトショーに「308 RCZ」のコンセプトカーとして登場し、2009年に市販型を発表。プラットフォームや部品の多くを308と共有しながら、専用の2+2クーペボディをまとった。生産はオーストリアのマグナ・シュタイア社が担い、2010年から2015年まで続いた。トップギア誌の2010年クーペ・オブ・ザ・イヤーをはじめ、各誌の賞を重ねている。
派手な数字を競う車ではないが、欧州、とりわけ英国で熱心な支持を集めた。生産は約6年間でおよそ6万8000台にのぼり、2015年9月にグラーツ工場で最後の一台が組み立てられた。手頃な価格で個性的なクーペを所有できる選択肢として、独特の立ち位置を築いた一台といえる。
日本へは2010年7月に上陸した。搭載されるのは1.6リッター直列4気筒ターボで、右ハンドルの6速ATが156ps、左ハンドルの6速MTが200psという二本立て。発売当初の価格は550万円台で、軽量なボディと組み合わされた走りは、刺激よりも軽快さと一体感を持ち味とした。
2013年6月、RCZは日本でもマイナーチェンジを受け後期型へと移行する。フロントマスクには当時の208や新型308に通じる最新のプジョー顔を導入し、ブラックライト仕様のバイキセノンヘッドライトやLEDポジションランプを採用。内装にもステッチ入りのレザートリムやピアノブラック仕上げが加わり、質感を高めた。さらに頂点には、1.6リッターながら270psを絞り出す高性能版「RCZ R」が後期型のみのモデルとして加わっている。
兄弟車にあたる308とは車台を分けあう間柄ながら、その性格はまったく異なる。実用性ではなく、所有する喜びと造形の個性に振り切ったクーペである。現在は中古車として流通し、フランス車らしい遊び心を比較的手の届く価格で味わいたい人にとって、ひとつの入り口になりうる一台だ。
| ボディサイズ | 全長4,287 × 全幅1,845 × 全高1,359mm |
| エンジン | 1.6L 直4ターボ |
| 最高出力 | 156・200ps(R) |
| 駆動方式 | FF |
| 乗車定員 | 4名 |
※スペックは当時の代表的なグレードの概略です(編集部調べ)
この図鑑に直したい・足したい情報がありますか? 編集部に提案する →