シトロエン発のプレミアムコンパクトとして登場し、のちにDSブランドの原点となった一台。フローティングルーフと豊富なカスタムで、おしゃれな相棒として人気を得た。
フランスの自動車メーカーが「プレミアムなコンパクト」という新しい価値を打ち出そうとした一台が、初代DS3である。全長3,965mmという扱いやすい寸法のボディに、Bピラーを黒く処理してルーフが宙に浮いて見せるフローティングルーフを与え、ボディとルーフ、ドアミラーで色を組み合わせるツートンを用意した。注文時にカラーやデカールを選んで自分だけの一台に仕立てられる遊び心が、この小さなハッチバックの個性を決定づけている。
ルーツはシトロエンにある。2009年のジュネーブモーターショーで公開されたコンセプト「DS Inside」を出発点とし、C3をベースに2010年1月、シトロエンDS3として登場した。当初はシトロエンの高級ライン「DS」を冠する一台という位置づけで、フロントにはダブルシェブロンのエンブレムを掲げていた。
評価は早くから高かった。英国のTop Gear誌は2010年のカー・オブ・ザ・イヤーにDS3を選び、数々の高級車やスーパーカーを退けての受賞として話題になった。欧州ではプレミアム・サブコンパクトの分野で支持を集めたとされる。また、このDS3をベースに開発されたDS3 WRCはワールドラリーチャンピオンシップで2011年から2016年にかけて活躍し、26勝を挙げてタイトル獲得に貢献した。市販車としての魅力と、競技の舞台での速さの両方で名を残したモデルである。
日本へは2010年に上陸した。エンジンは1.6リッター直列4気筒の直噴ターボと、同じ排気量の自然吸気の2種類。ターボを積むスポーツシックには6速MT、自然吸気のシックには4速ATが組み合わされ、新車価格はおよそ249万円からとされた。コンパクトながら走りに芯のある仕立てが、輸入小型車を探す層の関心を集めた。
その後、転機が訪れる。2016年6月、DSがシトロエンから独立した「DSオートモビル」というブランドになり、それにあわせてDS3も改良を受けた。フロントには「DS・ウィング」と呼ばれるグリルと「DS LEDビジョン」のヘッドライトが与えられ、エンブレムも従来のシトロエンのダブルシェブロンからDSのものへと改められた。シトロエンの一車種から、独立ブランドの顔へと姿を変えていったのである。
DS3は2019年、後継のDS3クロスバックの登場にともなって役目を終えた。シトロエンの名で生まれ、やがてDSという独立ブランドの出発点となった、いわば橋渡しの一台である。中古車として見れば、デザインの濃さと素性のたしかさをあわせ持つ、フランス車らしい個性に触れられる入り口になりうる存在だ。
| ボディサイズ | 全長3,948 × 全幅1,715 × 全高1,458mm |
| エンジン | 1.2L 直3 / 1.6L 直4ターボ |
| 駆動方式 | FF |
| 乗車定員 | 5名 |
※スペックは当時の代表的なグレードの概略です(編集部調べ)
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