アルミ製モノコックボディで1103kgという軽さを実現したフレンチスポーツの傑作。ミッドシップレイアウトから生まれる正確無比のハンドリングは、唯一無二の歓びを与えてくれる。
A110を語るうえで欠かせないのが、その圧倒的な軽さである。アルミ製のプラットフォームとボディを接着やリベットで組み上げ、車両重量はおよそ1.1トンに抑えられた。リアミッドに横置きされた1.8リッター直列4気筒ターボと、フロント44対リア56という重量配分が生む身のこなしは、大排気量に頼らず、軽さと前後バランスで曲がるという独自の流儀に貫かれている。内装は華美な装飾を競うのではなく、軽量なバケットシートと必要十分な計器でドライバーを包む、機能に根ざした硬派なつくりだ。
A110という名は、フランスのスポーツカーにとって特別な響きを持つ。1960年代に登場した初代「ベルリネット」は、軽量なボディでラリーの世界を席巻し、1971年のモンテカルロ・ラリーで優勝、1973年には世界ラリー選手権の初代コンストラクターズタイトルを獲得した伝説のモデルである。現行型は、長く途絶えていたアルピーヌのスポーツカーを、その名とともに現代に蘇らせた一台にあたる。
復活作は2017年のジュネーブ・モーターショーで発表され、欧州では2017年末から、日本やイギリス、オーストラリアへは2018年に上陸した。軽さを核とした走りの純度は欧州の自動車メディアからも高く評価され、ポルシェ・ケイマンやロータスといった手練れがひしめくスポーツクーペの領域に、フランス流の解答を提示する存在として受け止められている。
日本での販売は、限定50台の「プルミエール・エディション」から始まった。価格は790万円。搭載する1.8リッター直列4気筒ターボは最高出力252馬力、最大トルク320Nmを発生し、変速機には7速デュアルクラッチを組み合わせる。0-100km/h加速はおよそ4.5秒とされ、数値以上に軽快な身のこなしが個性となっていた。
2022年にはマイナーチェンジが行われ、ラインアップは「A110」「A110 GT」「A110 S」の3グレードへと整理された。GTとSにはエンジンの出力を300馬力、トルクを340Nmへ高めた仕様が与えられ、GTは快適性を重視したアルピーヌシャシー、Sはサーキットでの性能を追求したシャシースポールと、性格の描き分けが明確になった。
兄弟車や直接の競合を持たない、独立した個性がA110の魅力である。日常的な快適さや積載性を求める向きには不向きでも、軽い車体で操る喜びを知りたい人にとっては、ほかに代えがたい入り口となりうる。スポーツカーを台数や排気量ではなく、軽さと素直さという物差しで眺めてみたい人に、静かに語りかけてくる一台だ。
| 新車価格帯 | 890〜960万円 |
| ボディサイズ | 全長4,178 × 全幅1,798 × 全高1,252mm |
| ホイールベース | 2,451mm |
| 車両重量 | 1,103kg |
| エンジン | 1.8L直4ターボ(ミッドシップ) |
| 最高出力 | 252ps/6150rpm |
| 変速機 | 7速DCT(AT) |
| 駆動方式 | RR |
| 燃費(WLTC) | 12.8km/L |
| 乗車定員 | 2名 |
| 荷室容量 | 96L |
※輸入元の公式情報を基に編集部が掲載しています
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