ピニンファリーナ作の流麗なクーペで知られるDセグメント。映画『TAXi』の劇中車としても有名で、セダン/ワゴン/クーペを揃えていた。
プジョーがミドルクラスに据えたセダンが406である。先代405から受け継いだエンジン横置きの前輪駆動を基本としながら、全長4,555mm、全幅1,770mmという堂々とした体躯に、波打つことなく一筆で引かれたような伸びやかなボディラインをまとった。フロントはストラット、リアはマルチリンクという足まわりがもたらすしなやかな乗り味は、当時のプジョーが得意とした領域であり、長距離を淡々と流すような大人びた性格を持っていた。
406は1995年9月のフランクフルトモーターショーで発表され、405の後継として登場した。本国では1995年から2004年まで生産され、セダンに加えてブレーク(ワゴン)、そして二代目の名作となるクーペがラインアップされた。セダンは英国のWhat Car?誌で1997年のカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるなど、堅実なつくりと走りで評価を得ている。
そのなかでも別格の存在が、406クーペである。1996年のパリサロンで披露されたこの二枚扉は、デザインのみならず製造工程までをイタリアのピニンファリーナが一貫して手がけた。なだらかに傾斜するルーフと無駄を削いだ面構成は発表当初から称賛を集め、1997年には「世界で最も美しいクーペ」をはじめとする賞を相次いで受けている。生産はトリノ近郊のサン・ジョルジョ・カナヴェーゼ工場で行われ、その美しさは現在も色あせていない。
日本へは1996年10月にセダンが上陸した。当初の国内仕様は2.0リッター直列4気筒に右ハンドルのATを組み合わせた構成で、輸入ミドルセダンとして穏やかに迎えられた。クーペは1998年1月に導入され、上級グレードには最高出力およそ200psを超える3.0リッターV6も用意された。
1999年にはフェイズIIと呼ばれる改良が施され、前後のバンパーやランプ類のデザインが見直されるとともに、内装の質感や静粛性、安全装備が引き上げられた。基本骨格は保ったまま、熟成を重ねていったかたちである。
406の後を継いだのは407であり、クーペの系譜もまた407クーペへと引き継がれていく。とりわけピニンファリーナ製の406クーペは、流通量こそ少ないものの今も独自の支持を集める一台である。実用的なセダンやワゴンとしての406から、工芸品のようなクーペまで。フランス車のかつての美意識に触れてみたい人にとって、忘れがたい入り口となりうる存在だ。
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